どうもー.ジャーナル論文を残せたなんて運が良かったなーと思っているsitaです.
この記事では修士の学生時代にジャーナル論文を投稿した経験から,当時いざ書くぞ!っとなったときに知っておきたかったことをまとめました.
ジャーナル論文が出るまでの流れが分からなくて不安な大学院生はかなり居ると思います.僕もそうでしたし,正直レスポンスレターや最後の校正作業について実際に論文を書くまで知りませんでした.
この記事で「漠然とした不安」が少しでも「具体的な不安」に変わってくれれば嬉しいです.具体的な不安に対してなら行動しやすいですし,不明点が具体的になりますからね.
論文が出るまでの流れ
- ジャーナルに論文を投稿
- レビュアーからレビューが返ってくる
- 修正した論文とレスポンスレターを提出(リジェクトじゃなければ)
- レビューと修正をアクセプトされるまで繰り返す
- エディターから図の高品質化やサイズ変更をお願いされる(ルールを守っていても編集の都合でお願いされることがある)
- エディターから送られた原稿の最終校正
- 論文が公開
正直ジャーナルや研究分野によって細かい流れは違うと思うので参考程度にしてください.
同じ大学の人にしか聞いていないので全ての大学でそうなのかは分かりませんが,ジャーナルとのやり取りは教授がしてくれるはずです.
学生が直接やり取りしても話にならなかったり,時間の無駄だったりするからでしょう.
投稿する前の段階で死ぬほど苦しんでいる学生も多いと思いますが,投稿してからも戦いは続きますので覚悟してください.
論文をこれから書く人に知って欲しいこと
締め切りが存在する工程が沢山ある
ジャーナルによっては提出にも締切があります.結構いい加減なのである程度のクオリティがあれば締切後でも受け付けてくれることが多い印象ですけどね.
そして,レビューに対して論文を修正して返答を書くレスポンスレターにも締切がありますし,その後の図の修正や校正にも締切があります.僕の場合は論文修正とレスポンスレター,図の修正が1週間で提出しろと言われ,校正は2日で提出しろと言われました.
ちなみに何の前触れもなく突然連絡が来ます.そして突然1週間後が締切だとか言ってきます.
運が悪いことに僕は発表者として海外の学会に行っている最中にレビューが返って来ました.しかも,帰国したらすぐ次の学会用に実験を始めなきゃいけないのに(笑).過去に大学院で病んだ話を記事にしましたが,このタイミング悪すぎるレビューのメールがかなりクリティカルな1撃だったと思います…
最初の投稿は締切が無いことが多いので最初に提出する時まではゆっくり書くことができます.しかし,一度提出してしまうと突然メールが来て1週間程度で作業して返答しなければならない状態になります.
論文提出後はスケジュールに余裕を持つことが大事ですよ.まぁ大学院生とか教授が余裕を持つなんて無理なんでしょうけどね(笑).
画像の拡張子など書式の指定をよく見ること
ジャーナル論文を書くような人は生データの管理などしっかりしていて突然指定されても対処できると思いますが,画像の拡張子や解像度に指定があります.
もちろん測定器の解像度の問題があるので,SEM(走査型電子顕微鏡)や干渉計などの測定結果そのものに関しては粗くても大丈夫です.しかし,グラフは大体ベクターファイルで描くことが指定されていて,手書きした場合は600DPIでスキャンするなど指定されていることが多いです.
初めて論文を書く人の中には,自分の使っている装置で画像を最大限キレイに保存する方法をこれから調べることになる人も居るでしょう.そのときに最初から指定された拡張子と解像度などで出力することができれば作業が少し楽になります.
画像以外にも書式に細かい指定があることが多いです.書式をちゃんと守るとレビュワーの印象が良いですし,エディターからの修正指示も少なくなるのでちゃんと読みましょう.
Latexと言いながらWordファイルでもOKかも
あと結構多かったのがジャーナルのホームページではLatexで提出しろと書いてあったものの,教授がWordファイルで提出するパターンが結構あります.その場合はもちろん学生はWordファイルで作って問題ないです.
あと,その場合は画像の拡張子の指定がEPSだったとしても,EMFで教授に提出して大丈夫だと思います.
ちなみにWordファイルで提出する場合は,本文と表,画像はそれぞれでまとめて3種類のファイルに分けて提出します.画像や表は1ページに1枚貼る感じです.多分エディターが編集しやすいからだと思います.
査読(Review)について
まず大事なことなので何度も書きますが査読(レビュー)は突然送られてきます.そして,修正した論文と査読への返事(レスポンスレター)を1週間で寄越せと突然言われます.
レビューはレビュワーと呼ばれる論文を査読してくれた研究者から来ます.
商品のレビューのように「良い論文だと思います.」「考察部分が全体的に学術的な記述ができていない」みたいな簡単な感想だけ送ってくる人も居ますし,「何行目に~と書かれているが,こう言える根拠が何も書かれていない.」「何行目の~は本当か.私は~~だと思うが違うのか」「何行目の○○のグラフと本文の表記があっていない.本文の通りならそのグラフは△△するように描かれていないと厳密でない」みたいに気になったことを細かく書いてくれる人も居ます.
大体は両方か後者だけというパターンになります.
査読への返事(Response letter)について
大事なことなので何度も書きますが,レビューのメールは何の前触れもなくやってくるし,論文の修正と返事はほとんどの場合1週間で返せと言われます.
レビューが来てリジェクトされていなかった場合は,レビューを基に論文を修正して返信と一緒に送ります.
僕の研究室では質問1つまたは1文ごとに返信を書いていました.
例えば,「何行目の○○は表記がおかしい」みたいな文が書いてあったら,その下に「論文の該当箇所を△△のように修正しました」と書いたり,「何行目の○○は□□ではないのか」みたいな文が書いてあったら,その下に「△△な理由から○○であると推測されるため○○だと記述しました.説明不足であったため「△△であることから」という文を何行目に追加しました.」みたいなことを書いたりしました.(分かりやすくするために日本語で書いていますが,もちろん英語でですよ)
正直この辺って,研究室によって全然違うのかどうか分からないので,研究室の先輩やOB,教授に質問しまくるしかないです.
校正(Proofread)について
大事なことなのでまた書きますが,校正のメールも突然来ますし2日後までに返事をくれと言われます.
校正作業は一番楽な最後の作業ではあるんですが,自分がOKと返事したら世の中に公開されるというプレッシャーがあります.
自分の本名が最初に載っている訳ですからね.公開されてから表記ミスや論理展開の間違いに気づいてしまったら恥ずかしさや悔しさでもう寝れませんよ.
一番楽な作業ではありますが印刷して全力で確認しましょう.体感的にも分かると思いますが,どうやら多くの人は印刷した資料の方が内容が頭に入りやすかったり注意が働きやすかったりするみたいですよ.
正直な感想
辛かった.とにかく辛かった.修正作業とか投げ出そうと思った
はい.辛かった思い出しかないです.
論文執筆までに教授や先輩と何度もディスカッションしましたし,当時はまだ英語が全然できなかったのに色んな留学生に英語の添削をお願いしました.そもそも英語が分からないのに英語で英文の添削について説明されるという悪夢状態でした.
投稿するまでで本当に死ぬんじゃないかと思うくらい大変でした.皆さんは期間に余裕を持って書いてくださいね.公開されるまで1年かかることも多いですよ(笑)
しかも,上で書いたように投稿後も地獄です.突然論文の修正や鋭い質問への返答を1週間でしろとメールが来ましたからね.この修正も余裕ない時期に来るとマジで病むので気を付けてください.
誤魔化しが利かない.実験計画がちゃんとしていないと論文は書けない
レビュワーが鋭くて誤魔化しが聞きません.
実験手順が曖昧にしか書けない部分があったのなら,ある程度ちゃんとしたジャーナルなら絶対指摘されます.例えば,結果の有効数字からそれぞれの作業や装置で精度がちゃんと出ているのか質問されます.具体的な精度が言えないとダメですし,レビュワーの思う必要な精度が出ていない場合はそれでも問題がないことの説明をレスポンスレターに書いたり論文に付け加える必要があります.
また,実験結果の解析方法とかも詳しく聞かれる可能性があります.解析ソフトの仕組みはちゃんと分かっていますか?精度がちゃんと出ていると説明できますか?測定器の仕組みと精度は分かっていますか?これらに自信がなくて明快に記述できていないとある程度のジャーナルには通りませんよ.(たまにその分野で有名なジャーナルでも何故か記述がテキトーな論文が載っていたりもしますが…)
これらの部分で問題があると,実験が終わって論文を書き始めてからじゃ対処のしようがないです.
つまり,実験計画を立てる段階である程度明確な目的を持って,必要な精度を考えておかないと論文を書くのは難しいです.もっと言うと最初から論文を書くことを常に考えて実験をしないとダメです.サンプル数や装置のセットアップに妥協は許されません.
もちろん意図しない偶然の発見を論文にしたい場合もあると思いますが,その場合は運が良くない限りはジャーナル論文に向けて再実験しないと厳しいです.1つの実験が長い分野の人には厳しいですね…
論文書くことを意識して研究の進め方が上手くなった
上に書いたように,最初から論文を書くことを意識して研究を進めないと論文なんて書けないことを学びました.
さらに,論文のレビューを通して自分の研究のどこに学術的な問題点があるのかを知ることができたので,ジャーナル論文を最後まで完成させた後は研究の進め方や実験条件の選定が凄い上手くなりました.
新社会人なのでまだ実感できていませんが,正直研究に限らず多くのことでジャーナル論文を書いた経験は活きていくと思います.
とにかく嬉しい.自分の本名を英語で検索すると論文が出るのエモい
ネガティブなことをたくさん書いてきましたが,自分の論文が実際に投稿された後はメチャクチャ嬉しかったです!
自分の本名を英語で検索すると自分の論文が出てくるのエモくないっすか?エモいよね!(まぁ,最近Facebookやら変な占いサイトやらのせいでGoogle検索の順位は低いと思いますけど…)
自慢したいとかじゃなくて純粋に嬉し過ぎて色んな人に報告しちゃいましたね.
論文のおかげで奨学金返済が一部免除になった.本当にやって良かった
そして金の話です(笑).日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を借りていたんですけれども,僕の大学では「特に優れた業績による返還免除」で推薦される基準がジャーナル論文の本数でした.
僕の卒業した年はコロナのせいで研究業績が悪かった年だったので,国際ジャーナル論文を1本投稿しただけで返済半額免除を勝ち取れました!
ちなみにJASSO奨学金の返済免除を狙っている大学院生に向けた記事も書いたので,興味あれば是非~
引用数増えてるけど,どんな風に引用されているか不安過ぎる
またネガティブな話に戻ってしまいますが,論文公開後も実は嬉しいことだけじゃなくて不安になることもあります.
まず,僕の論文は結構早い段階で引用され始めていてビックリしているんですが,どんな風に引用されているのかボロクソ言われていないかとても不安です.
まぁ正直言うと序論でチョロっと触れているだけのパターンがほとんどなんでしょうけどね.
ちょっと話は変わりますが序論で論文を引用しまくるのは,その論文の新規性とインパクトがどれほどのものかを説明するために必要ではあります.実状としては見た目の文献を増やしているだけの論文も結構あると思いますけどね…
致命的なミスがあったら何が起こるのだろうと,ちょっと不安
上と似ていますが,「実は意図せずに研究不正をしてしまっていたり,考察部分で全然的外れなこと言っている部分があったらどうしよう」とこの記事を書いたときに思いました(笑).
研究不正ってかなりの件数が発生しているみたいなので,小保方さんみたいに有名になることはないと思いますけど…
それでも何かあったら学歴を剥奪されたりとかしないかとかちょっと不安に感じてしまいますね…まぁ俺は意図的に不正なんてしてないしその時はレビュワーも同罪だよな()
最後に
ジャーナル論文を書こうとしている人の中には悪く言うと教授に脅されてやっているような人も居ると思います.そういう場合はジャーナル論文って未知の世界過ぎて不安ですよね.
まぁ何であれジャーナル論文が公開されるまでは超時間かかるし超大変です.
正しく覚悟を決めて良い論文が書けることを祈っています.論文に限った話ではないですが,とりあえず早く行動してみるしかないですよ何事も.